第19話 日常の中の非日常

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「実際はどうしてたんですか?」  倉じいが欲しいものを聞くより、倉じいが過去に贈ったことがあるものを聞いたほうがいいと思った。  自分のことを話すのは得意じゃないけど、人のことは簡単に聞けちゃう私は、ひょっとしたらずるいのかも。 「誕生日は食べ物や飲み物、母の日と父の日は形に残るものにすることが多かったな」  具体的な商品名は出てこなかったけど、話はふくらませられると思った。  もう少し掘り下げよう。 「私も、父の日にお酒をプレゼントしたことはあるんですけど、形に残らないものでも平気ですよね?」 「そこは個々人なんじゃないか。酒が好きなら喜ぶとは思うが、僕なんかは飲み終わったときに少し寂しくなる気がするな。残り少なくなったら急にペースが落ちそうだ」  父はそこまでお酒が好きってわけじゃないし、私も全然詳しくないから、とりあえず有名な銘柄のものをあげた。  おいしいって言ってくれたけど、なんとなく違う気がしたから、その一度きりだったんだけど。 「やっぱり消耗品は違いますよね……。長く使えるもののほうがいいかな」  私がこう言うと、倉じいは二枚目のおせんべいの封を切って食べ始めた。  リラックスモードということなんだろうけど、何かコメントが欲しい私はお茶を飲むだけにした。
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