「ただいま」は「おかえり」のあとに ⑥

第１９話 日常の中の非日常

「ところで、莉亜は父の日の由来とか起源ってわかるか？」

　なんてことのないことを聞くような感じで倉じいはこう言ったけど、私には全然わからなかった。
　これじゃおせんべいに手を出せそうもない。

「いえ、まったく考えたことなかったです」
「諸説あるんだろうが、日本で広く浸透し始めたのは一九八〇年代って言われている」

　そうだったんだ。
　知らなさすぎて何も言えない。

「母の日はもっと前から定着していたから、それならばと、デパートなんかが販売戦略として取り上げたんだな。六月の第三日曜日になったのは、アメリカで正式に制定されたからだとされている」

　あ、やっぱり商業がらみだったんだ。
　バレンタインとかハロウィンなんかも同じだよね。それらの起源も私はよくわかってないけど。

「さっき莉亜は、消耗品は違うって言ったが、日本では黄色のバラを贈るのが一般的って言われているんだぞ」
「え、そうなんですか？　母の日のカーネーションと同じ感じだったんですね」
「どうしてカーネーションなのかは知ってるのか？」

　倉じいは不敵な笑みを浮かべてこう言った。
　うっかり知ってるみたいな口調で言っちゃったけど、当然私が知っているはずがない。