第19話 日常の中の非日常

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「……いえ、それもそういうものだという認識しかないです」 「はっは、そう落ち込むな。多くの人が知らないだろうからな」 「倉じいは本当にいろんなことを知ってますよね。尊敬です」 「長く生きてるからな」  前もそんなふうに言ってたけど、年齢は関係ないと思うんだよね。  私が倉じいの歳になったときに同じようになれる気がしない。 「母の日のカーネーションも、父の日のバラも、起源となった最初の人がそれを贈ったからだとされている。要するに歴史だな。最初の人がどうしてそれらを贈ろうと思ったのかは僕にはわからんが」  倉じいは社会の先生だってことはわかってるけど、歴史が専門だったのかな。  地理とか政治経済なんかにも詳しそうだけど、社会の先生がみんなこうだってわけじゃないよね。 「私が知らなかっただけで、多くの人は黄色いバラを贈ってるんでしょうか」 「それはどうだろうな。少なくとも、カーネーションほど認知はされていないだろう。ちなみに、僕がバラを贈ったのは一度だけだ」 「どうして一度でやめちゃったんですか?」 「それは簡単だ。父親がそれをあまり喜ばなかったからな。花なんてもらっても困るっていうのは、男の意見としては一般的だろ」 「あー……」  一般的にはそうなのかもしれないけど、倉じいも四季さんも植物は好きだよね。  私の父はどうだろう。
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