第19話 日常の中の非日常

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「そんなわけだから、別に形に残るものである必要はないと思うぞ。花を消耗品と言っていいのかはわからんが」 「そうなんですね。ちょっと花も視野に入れて考えてみます」 「さっきも言ったが、何を贈るにしても、大切なのは気持ちだ。莉亜には言うまでもないか」 「そうなんですよね。私はつい、相手が喜んでくれるかどうかばっかり気にしちゃうんですけど」 「それも大事だと思うが、それゆえに義務感を持つようじゃ寂しいよな」 「そうですね。そうならないようにはしたいです」 「莉亜には難しいかもしれんが、贈り物なんて自分の都合で決めればいいと思うぞ。形だけのギフトなんて、資本主義経済を潤す以外に何の効果もないからな」  倉じいにしては痛烈な言葉が出たような気がするけど、これは社会の先生ならではのユーモアってことでいいんだよね。  私としては、倉じいがプレゼントじゃなくてギフトって言葉を選んだことが印象的なんだけど。  ひとまずこの話はもう終わりかなと思ったけど、こういうときにどうやって次の話題に移ればいいかがわからない私。  こうして黙っていれば、倉じいが何か言ってくれるかなって思っちゃってるのがよくないんだよね。 「あら、今日は大人の集まりなのね」  静かな時間が流れていたリビングに変化をもたらしたのは、お仕事から帰ってきた静子さんだった。  手にはお買い物袋を持っていて、これから夕飯の支度に入るのだろう。
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