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「おかえり。今日もご苦労さん」
「ただいま。今日は遅めのおやつなのね」
テーブルに置かれたおせんべい屋さんの袋を見て、静子さんは目を細めながらこう言った。
時間はもうすぐ五時になる。
「ちょっと倉じいに話を聞いてもらっていたんです。静子さんもいかがですか」
自分で買ってきたわけじゃないけど、こういうところで気を遣う必要はないことはもう学んだ。
静子さんが好きなおかきを袋から取り出す。
「まだ夕飯には早いだろうし、佐伯さんも莉亜の悩みを聞いてやってくれよ」
倉じいも私に合わせてくれた。
静子さんからも意見はもらいたいから、私も続くように笑顔を見せる。
「そうね。それなら、お呼ばれしようかしら」
そう言って静子さんは、エプロンを着けずに自分の席に腰を下ろしてくれた。
お茶の用意をしたほうがいいと思ったけど、私が動くより前に静子さんの口が動いた。
「それで、莉亜ちゃんは何に悩んでるの?」
「父の日に何を贈ろうか、決めかねているらしい」
私のことなのに、私じゃない人が話を進めてくれる。
ありがたいとは思うけど、ここはがんばらないと。
そう思った私は、父から電話があって明後日会うことになったというところから説明をして、さっき倉じいから父の日の起源について教わったという話をした。
二人は音を立てないようにおせんべいを食べつつ、遮ることなく私の話を聞いてくれた。
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