第19話 日常の中の非日常

16/88
前へ
/235ページ
次へ
「――そういうことね。なんだか急な話ねぇ」 「言われてみればそうだな。電話があったのは今日なんだろうが、それまでは何も考えてなかったのか?」 「ネット通販でいろいろ探してはいたんですけど、なかなか決め手がなくて」 「そうか。最近はネットで注文できちゃうんだもんな」 「時代よねぇ。私はデパートの特設コーナーしか思い浮かばないもの」  時代とか年齢とかに関する話になっちゃうと、なんて言ったらいいのかわからなくなる。  私だってちょっと前まではリアル店舗に足を運ぶタイプだったんだけど、なんだかそれも言えそうにない。 「佐伯さんは、陸から毎年もらってるだろう?」 「そうね。今年は持ち運びできるちっちゃな扇風機をもらったわ」 「あ、そうだったんですか。私、見たことないですよね?」  静子さんとは前に母の日に関する話をしたけれど、今年のことは聞いてなかった。  陸くんはどうやって決めたんだろう。 「まだそんなに暑くないし、外出するときに使うようにしてるから、家の中ではあんまり使わないんじゃないかしらね」 「やっぱり夏っぽいものになるんだな。売り場にあるものから探したらそうなるんだろうな」  というか、陸くんはいつ買いに行ったんだろう。  静子さんと一緒に行ったわけじゃないだろうし、これはあとでこっそり聞いておきたいな。
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加