第19話 日常の中の非日常

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 それからしばらく、陸くんの受験に関する話が続いた。  元先生と受験生の子を持つお母さんが一緒だから、いろいろと興味深い話を聞くことができた。 「そろそろ着くが、着いたらいったんばらばらになる感じでいいのか?」  移動時間は三十分くらいのはずだけど、話に夢中になっていたからか、あっという間に着いちゃった気がした。  このショッピングセンターには何度か来ているけど、まだここが家からどれくらい離れているのかはわからない。 「私はそれでいいわよ。日用品売り場に行って、そのあと文房具屋さんかしらね」 「私は父の日の贈り物が買えれば目標達成なんですけど、どれくらい時間がかかるかはまったく読めないんで……」 「スーパーの中に特設コーナーはあるでしょうけど、それ以外の専門店街のほうも見てみるのかしら?」 「そんなことしたら迷子になっちゃうんじゃないか?」 「さすがに大丈夫だと思いますけど、なるべく特設コーナー内で決めたいと思います」  迷うことを前提に話を進められるのも慣れたし、静子さんがフォローをしてくれないのも織り込み済みだ。  私だって自覚してるし、下手に反抗することもない。 「僕は本屋と電器屋に寄ってからは適当にぶらぶらしてるつもりだから、用が済んだら連絡してくれ」 「四季くんからのおつかいは何もないの?」 「今日は平気だって。帰るときに連絡くれって言われただけだな」
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