第19話 日常の中の非日常

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「いらっしゃいませぇ。何かお探しですか?」  すると、私と同じくらい、いやもっと若そうな女性店員さんが声をかけてきた。  人懐っこそうな笑顔と間延びした話し方で、警戒することなく受け答えすることができた。 「あ、はい。父の日ギフトで何かいいものないかなって」 「それでしたら、こちらにたくさん用意してありますよぉ」  そう言って歩き始めた店員さんについていくと、手作りと思われるかわいらしいポップで飾られた特設コーナーがあった。 「すごい……」  私はひとこと、感嘆の声を上げることしかできなかった。  店員さんは誇らしげにこう言った。 「ありがとうございます。見てるだけで元気になれますよねぇ」  ひと目見て、お花にしようって思った。こんなに綺麗だとは思わなかった。  お父さんがどう思うかとかはどうでもよくて、これをあげたいって思った。 「たくさんありますね。どれにしよう……」  私がここで何かを買うことを前提にしたような発言をすると、店員さんはより一層嬉しそうな顔になって、ひとつひとつの商品の説明をしてくれた。
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