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「どこかいいお店あります? できれば静かな雰囲気のところがいいんですけど」
「あるぞー、隠れ家的なところが」
「それ、教えてもらっていいですか?」
「もちろん構わないが、莉亜にはちょっと難しいかもしれんな」
私には難しいって、どういうことだろう。
隠れ家的なお店なら、そんなにお金がかかる感じはしないけど。
倉じいは自分のスマホを使って何かをし始めたから、私は黙ってその様子を見守ることにした。
こういうときにおせんべいを食べていいのかどうかがわからない。
「ほら、ここなんだが、わかるか?」
倉じいが見せてきたのはお店の地図だった。
難しいって、そういうことね。
「えっと、大里駅の向こう側ですね?」
「そうだな。徒歩五分って書いてあるが、そんなに遠い気はしないな」
「…………」
私はなかなかの方向音痴で、見知らぬ土地では簡単に迷子になるし、地図があっても目的地にまっすぐ行けないことが多い。
それはもう住民のみんなが知っているから、こんなふうに言われることも増えてきた。
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