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「店の名前と電話番号を押さえておけば、なんとかなるだろ」
「そ、そうですね。いざとなったら父がいますし」
こう答えながら、倉じいおすすめのお店の情報をスマホにメモした。
明日下見にでも行こうかな。
倉じいのスマホを返したとき、ふと思った。
私の住む街に父が来るのに、私も行ったことがないお店に行く。これでいいのかな。
通い慣れた商店街を案内したほうが、私も落ち着くし、父も喜ぶ気がする。
「莉亜」
「はい?」
「難しい顔してるぞ」
「え、そうでしたか」
「今は何を考えてたんだ?」
こういうとき、以前の私ならすぐに「なんでもないです」って言ってこの場をやり過ごしていたと思う。
だけど、ここで暮らすようになってから少しずつ変わってきたと、自分では思っている。
「えっと、なんていうか、これでいいのかなって」
「このお店のことか?」
「いえ、そのお店がどうってことじゃなくて、せっかくの機会なのに、私も知らないお店に行っていいのかなって」
私からいいお店はないか聞いたのに、何を言ってるんだろう。
そんなこと言うなら、はじめから自分で考えればよかったのに。
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