第19話 日常の中の非日常

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「店の名前と電話番号を押さえておけば、なんとかなるだろ」 「そ、そうですね。いざとなったら父がいますし」  こう答えながら、倉じいおすすめのお店の情報をスマホにメモした。  明日下見にでも行こうかな。  倉じいのスマホを返したとき、ふと思った。  私の住む街に父が来るのに、私も行ったことがないお店に行く。これでいいのかな。  通い慣れた商店街を案内したほうが、私も落ち着くし、父も喜ぶ気がする。 「莉亜」 「はい?」 「難しい顔してるぞ」 「え、そうでしたか」 「今は何を考えてたんだ?」  こういうとき、以前の私ならすぐに「なんでもないです」って言ってこの場をやり過ごしていたと思う。  だけど、ここで暮らすようになってから少しずつ変わってきたと、自分では思っている。 「えっと、なんていうか、これでいいのかなって」 「このお店のことか?」 「いえ、そのお店がどうってことじゃなくて、せっかくの機会なのに、私も知らないお店に行っていいのかなって」  私からいいお店はないか聞いたのに、何を言ってるんだろう。  そんなこと言うなら、はじめから自分で考えればよかったのに。
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