17人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうだなぁ。今回の顔合わせの目的によるんじゃないか」
それでも倉じいは、一つも嫌な顔なんてしないで、すぐに私の話に取り合ってくれた。
こういう場面では、だいたい私の考えが少数派になることが多い。ここは倉じいの言葉を聞こう。
「目的、ですか?」
「あぁ。さっきの話からするに、今回はたまたま親御さんがこっちに来ることになったから、ちょっと顔を見せようって感じだよな」
「そうですね。その通りです」
「それならどんな店でも構わないと思うな」
「えっと、どういう場合には、知らないお店は避けたほうがいいってなりますか?」
少しは自分で考えろって言われちゃいそうだけど、倉じいはすぐに答えてくれた。
こういうときの倉じいは、先生っていうよりおじいちゃんって感じだ。これは言ったら失礼になるのかな。
「莉亜に会いに来るのが一番の目的だったら、避けるべきだろう」
言われてすぐになるほどって思った。
だけど、私の思い違いがあったらまずいから、確認はしておこう。
「仕事のついでとかじゃなくて、私の様子を見に来るってことですよね」
「そうだ。一人暮らしを始めた娘を心配して会いに来るのなら、普段の生活になるべく近いものを見せてやるべきだろう」
私の思った通りだった。
今回はそういう話じゃないから、知らないお店でも大丈夫ってことだね。
最初のコメントを投稿しよう!