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「そのときこそ、ここに来てもらうべきですよね」
「はっは、そういうことになるな。さっきはうちに来るのか聞いたが、いくらなんでも急すぎるよな」
私の心の準備だけじゃなくて、大家である四季さんの都合もあるし、ごはんを作ってくれる静子さんにもちゃんと話しておかないといけないもんね。
今の私に一人暮らしをしているという感覚はない。
「私の親がここに来るのは、たぶんずっと先ですね」
私がこう言うと、倉じいはお決まりの「そうかそうか」を出して、残っていたおせんべいを食べきった。
これでこの話も終わりかと思った私は、このタイミングで自分のおせんべいを食べることにした。やっぱりおいしい。
「あ、そうだ。もう一つ、いいですか?」
私がこう言うと、倉じいは目を細めて嬉しそうにうなずいてくれた。
本当にみんな、私の話を温かく聞き入れてくれる。
「父に何か贈り物をしようと思うんですけど、どういうものがいいですかね」
「贈り物? なんだ、誕生日でも近いのか」
「あ、いえ。次の日曜日が父の日じゃないですか。せっかく会うんだから、父の日を待たずに直接何か渡せたらいいかなって」
「あぁ、今週がそうか」
倉じいはカレンダーを見ながらこうつぶやいた。
倉じいのことだから、父の日のことも当然頭に入ってると思ってたから、この反応は予想外だった。
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