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立花恵里は画家の卵だ。立花は将来、画家になるために毎日、デッサンをしていた。
ある日、立花が少しでも絵の技術を勉強しようと思って美術館に行った。すると展示の最後で自分の絵が飾られていて驚き声が出なかった。
盗作ではないかと思ったけど、自分の絵が展示されるはずはないという思いがあった。展示されている美術のテーマは『次世代を担う美術』となっていた。
立花は自分が次世代を担うなんてありえないと、懇意をしている師匠の富岡に相談した。師匠は笑みを浮かべて応えた。
「立花君は才能がある。私が美術館に推薦しておいたよ」
立花は驚愕した。まだ画家の卵だと思っていたけど、もう画家になれたのだろうか。しかし立花は不満があった。
「出展するなら私に声をかけてくださいよ」
「私の名前で展示している。君の作品だとはバレてない」
立花は富岡に怒りを感じたが、富岡はなんとも思ってないようだ。
「先生、弟子の作品を盗作するなんて酷いじゃないですか!」
「君の名前では展覧会に出展できない。私の名前だからこそ出展できるんだ。自分の力量をわきまえろ」
立花は美術館に問い合わせをして、厳正な審議の結果、富岡を盗作容疑で刑事告訴した。皮肉なことにその一件によって立花は画家の卵を破ることができた。
立花はそれから美術の研鑽を積んで、富岡より遥かに優れた美術家になった。
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