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『それにしても、お前の創った世界はなんというか……イマイチだな』
……は? いまいち?
『うむ。あまりに平和すぎる。天災や獰猛な生物など人々が怖れる脅威がなく、人間にも悪人が一人もおらん。実に退屈でもの足りん世界だ』
いやいやいや。それが人々が求める理想の世界じゃないっすか。どう考えても平和なのが一番っしょ。
『永遠の平和など進化の妨げにすぎん。秩序と混沌、正と悪が入り交じり、幸と不幸が交互に訪れ、生きとし生ける者が強く進化していく。それがワタシの求める理想の世界。そうだな、お前が元いた世界に近いな』
はあ? あのクソみたいな世界のどこがいいんだよ。この神もSNSでクソリプ送りつけてくる輩と大して変わんねーな。
『というわけで、ワタシが直々に手を加えてやろう』
創造主が手を振り上げた。直後、まばゆい光と轟音が起こる。
森に雷が落ちたと理解した時には、森は炎に包まれ、川や湖は蒸発し、炎は町を襲い、獣や人々は初めての天災に泣き叫び、なすすべなく飲み込まれていった。
『よしよし。やはりこれくらいの試練は与えてやらんとな』
う……「うわああああッ!? 俺の世界が台無しだぁああああッ!」
一瞬だった。
長い時間をかけ、苦労して創りあげた世界が、一瞬で無に還った。
「おっ、俺の……俺の世界が…………」
『ううむ、すっかり炎上してしまった。人類も全滅したか。こりゃちとやり過ぎたっちゃやり過ぎたかもしれん。まあ、また一から頑張ってくれ』
「も、もうこんな夢イヤだ……。早く、早く覚めろ……。俺を現実に戻してくれぇぇ……」
焼け野原となった世界とがっくりと項垂れる神の代行を残し、創造主は宇宙の彼方へと飛び去った。
『たまごひとつ産み出すのに100年。あれだけ荒れた世界を元に戻すとなると、数億年はかかるだろうな。ま、替えはまだまだあるからよしとしよう』
どこまでも続く広大な宇宙。
無数の“たまご”が孵化の時を待ち漂っていた。
END
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