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俺の口から、たまごが出た?
一体何のたまごだよ。まさか中から小さい俺が産まれるとか。まさか、な。
そっと手に取ってみる。落下の衝撃で底の方にヒビが入っていた。それに動揺し思わず落としてしまった。
二度目の落下でたまごは完全に割れた。恐る恐る覗き込むと、殻の裂け目から茶色と緑が見えた。
これは……木だ。手乗りサイズのミニチュアだが、葉の一枚一枚までリアルな作りの木。なんで俺の口からたまごが出て中から木が産まれるんだよ。確かに木で気を紛らわしたいとは思ったけども。なんつーシュールな夢だ。
するとたまごの殻はボロボロと朽ちて、土に変化した。ああ、ここに木を植えろってか。
こうして真っ白な空間にポツンと木が生える異様な光景が誕生した。うーん。一本じゃ逆に寂しいな。もっと緑が増えれば目の保養になるんだが。
と思った矢先、再び吐き気に襲われ、たまごを排出。またしても中から木が産まれた。
立て続けにたまごを口から吐き、木が産まれ、地面に植える。その作業を何度も繰り返していると、いつしか俺の足下に小さな“森”ができた。
試しにりんごやバナナなどイメージしたら木にそれが実って出てきた。更にはメロンやスイカなど木にはならない果物の木まで産み出せた。どうやら頭に思い描いた物をたまごとして産み出せる仕組みのようだ。変な夢。まあお陰で殺風景だった空間が多少は華やかになった。
しかし調子に乗って産み出しすぎたかな。ただでさえ狭い場所に閉じ込められてんのに森なんか作っちゃって。これじゃ足の踏み場もない。
と思いきや、心なしか周囲の壁がやや遠ざかっているような気がした。ひょっとして木が増えるにつれ俺がいる空間も広くなってる? なら産み出し続ければどこまでも広くなっていくのか?
おもしれえ。なら俺だけの世界をここに作ってやる。他に特にやることも無いしな。
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