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最初は花弁の溝をなぞるように。
その後は蕾を摘むように。
私の身体が跳ねるたび、私が息を乱すたび、彼は私の唇にキスを落とす。蕾から花芽が顔を覗かせると、彼は私の蜜を指先に乗せて優しく愛撫する。途端に耐え難い享楽に打ち震えた体の髄につられて、私の腰が浮く。
それを待ち望んだように、私の蜜壺に彼のおしべが滑り込んだ。浅くゆっくりと逢瀬を重ねるおしべは次第に速度を増し、波のような振動が深い身の渇きを埋める。
大きく彼が私を抉った瞬間、私の深部におしべの先端が接吻し、火花が散ったように視界が光る。私と彼を繋ぐその蜜壺には、私だけではない蜜が粘り気を帯びて注がれる。
それでも彼は私を離さなかった。
手の指先にすら力が入らない私の肩を抱えた彼は繋がったままで私を彼の上に座らせると、壊れ物を扱うようにもたれ掛からせる。
──まるで生け花だ。
彼の固く鋭い針に刺された私は、逃げ場のない剣山に刺された哀れな花のように思えた。
私の息が整ったのを見計らって、彼は私の無防備な背中を指先だけで触れる。背骨を這うように下へと伸びる感触は、私の臀部の上、尾骶骨辺りで彷徨う。
彼に縋るように反応する私は、自分の身体が震えるたびに音を立てる恥ずかしさで、彼の胸に顔を埋める。スーツで着痩せしていたのか、スラリと引き締まった彼の筋の通った彼の身体に、私はゆっくりと触れた。
静かに笑った彼は低く呻く様な息を私の耳に掠めると、おしべを擦り付けるように動かす。私は逃げ場も無くその愛撫に身を任せ、何度もめしべを縮ませて彼の愛情を受け止めながら震え上がった。
「僕だけの花になりなよ」
彼は囁く。
それは聖人か、悪魔か。
「君が僕だけの花になるなら、一生涯此処で可愛がってあげるから」
私は彼の深く淫らな花の香りに意識を委ねると、野に咲き誇るのを諦めた。
─fin─
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