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どんどん欲張りに ♢壱成♢1 ※
「……俺も、京がほしいよ」
本当にほしい。もうずっと後ろがうずいてる。
京だと知らないときもノブを愛していたが、片想いだと思っていたから気持ちにブレーキがかかっていた。
京だとわかったあとも、黒髪と黒目のノブの姿に、まだ今よりも冷静でいられた。
ハニーベージュの髪と薄い青緑の瞳の京と愛し合う。想像するだけでも俺の心臓は壊れそうで、身体中が燃え上がった。
キスだけで後ろがうずき、京の裸に顔が火照る。愛撫をされれば簡単に絶頂を迎えた。
ノブと京は全然違う。
京と繋がったら、俺はどうなってしまうのだろうか。
京の髪を指で梳くように撫でた。ノブの髪はもっと硬かった。ふわふわで柔らかい京の髪。この髪にふれるだけで幸せを感じる。ときどき京だと確認するように、俺はこうして髪にふれた。
京の髪を梳きながら首に腕をまわし、ふたたび唇を合わせた。
「……きょう……、ん…………」
「壱成……」
ゆっくり優しく自然と絡まる舌が幸せだ。
キスがこんなにも愛が伝わる行為だと俺は知らなかった。
京の柔らかい髪にふれながら、京の瞳に見つめられながらのキスは、脳がしびれて、全身がとろけてしまいそうなほど気持ちいい。ノブと同じはずなのに全然違う。
京、愛してる……。
このまま、キスをしながら繋がりたい。
俺は腰を上げて京のものを後ろにあてがい、ゆっくりと腰を下ろした。
「ん……っ、……ぁ……っ……」
「……ぅ……っ、いっせ……」
繋がった瞬間、京が気持ちよさそうに可愛く顔をゆがめ、優しいキスに熱がこもった。
「壱成……愛してる……」
合わせた唇の間から伝えられる愛のささやきが、俺の耳を溶かす。
「ん……、愛してる……きょう……愛してる……」
黒髪に黒目のノブじゃない、ハニーベージュの京と繋がって愛を伝え合う。愛があふれて苦しくて、気が変になりそうだ。
身体中がビリビリと感じて、いままでに味わったことのないほどの幸福感に満たされた。
動かなくても、繋がっているだけで気持ちがいい。
京が俺の中にいる。ノブじゃない、京が俺の中をいっぱいにしている。
いま、ずっと焦がれてた京を全身で感じていた。
喉の奥がぐっと詰まって涙があふれそうになった。
ゆっくりと唇が離れ、京が俺を見つめる。
「壱成……」
京の声が震えていた。
「……ん、どうした?」
京は、いまにも泣き出しそうな表情で、苦しそうにつぶやいた。
「……ノブって言ってみて」
「……え?」
聞き間違いかと思って問い返す。
「ノブって……言って?」
黒髪に黒目ではない京をノブと呼ぶのは少し抵抗があったが、言われるままに呼びかける。
「ノブ……」
「……もっかい」
「ノブ……?」
京の手が、優しく俺の頬にふれた。
「京って……言って?」
「……京」
「……もっかい」
「京」
京の目に、みるみる涙がたまっていく。
「やべぇ……心臓いてぇ……」
泣き笑いの表情で、京は俺を抱き寄せた。
「ノブって呼ばれるの、さ。抱いてるときが一番つらかったんだ。……ずっと……京って呼ばれながら抱きたかった……」
「…………俺もだ。……ずっと……京と呼びながら、お前に抱かれたかった……」
京の頭を抱き込むようにして首元に顔をうずめると、京が一瞬笑ったように感じた。
「……笑ったか?」
「いいや?」
涙声なのに、どこか含み笑いの京に眉を寄せる。
「なんだよ……笑っただろ?」
俺が問い詰めると、京は堪えきれないというように吹き出した。
「……だって」
「なんだ」
「やっぱりノブが俺だってわかってたんじゃん」
京に愉快そうに笑われて、しまった、と思った。
さっきせっかく誤魔化したのに。俺はまた無意識に……。
「……誘導尋問だ。……ずるいぞ」
なだめるように背中を撫でる京の手があたたかい。
「……っとに可愛い。マジで参る……。愛してるよ、壱成」
耳元で愛をささやかれて頭にキスを落とされた瞬間、俺の心が震えた。
「俺も、愛してる……。愛してるよ……京……」
京に愛を伝えられる幸せに、また涙が込み上げる。
俺は、ぎゅっと首に抱きついて想いを口にした。
「俺はずっと……セフレのままでも幸せだったんだ。ずっとお前のそばにいられるなら、たとえ京の名前を呼べなくても、俺には充分すぎるくらい幸せで……怖くらいだったんだ……」
「……だった、けど?」
「けど…………もう俺はセフレには戻りたくない。この夢みたいな幸せを絶対に失いたくない。いまは……どんどん欲張りになる自分が怖いよ……」
「そんなの、全然欲張りじゃねぇじゃん。もう俺ら、人生のパートナーだろ? 籍は入れらんねぇし、なんか実感わかねぇけど……もう俺ら結婚したってことだよな?」
結婚という言葉に、こらえきれない涙がこぼれ落ちた。
この俺が幸せに涙する日が来るなんて想像もしていなかった。
「……っ、もう……幸せすぎて死にそうだ……」
「だめだよ。じいさんになるまで一緒にいるんだから」
「京……」
顔を上げると、京も涙を流していた。その幸せそうな表情を見るだけで、脳も身体もすべてが甘く溶けだした。
俺たちは導かれるように唇を合わせ舌を絡め合う。
その熱いキスは、深く、激しく、ふれ合いを増していった。
「あ……っ、ン……」
俺の中の京がドクドクと脈打ち、その瞬間、俺の身体は喜んだ。
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