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過去の恋人との付き合いを思い返してみる。
付き合い始めは楽しい。それなりにドキドキもする。
知らない相手を知っていく作業は面倒でもあり、しかし新鮮さもある。
けれど何度か会ううちに新鮮さも無くなり、良くも悪くも相手の人間性が見えてくる。デートの流れもパターン化してくる。
ショッピングをして、ご飯を食べて、ホテルへ行くだけのデート。そして思う。
——最近、紺野に会ってないなぁ
——変わらずに元気でいるかな
彼氏から、ベッドの中へと誘われても、一度考え始めた思考は完全には消えない。
——別に、恋人がいたって男友達としてご飯に行くくらいいいじゃん。本当に融通が利かないんだから
キスをされ、服を脱がされ、愛撫をされる。
——この人とも駄目になったら、また紺野を飲みに誘おう
こんなの、うまくいくはずもない。
「千鶴、どうしよう。あたし、最低かも……。なにもかも自業自得だった」
無自覚だったからなんて、言い訳にならない。
「あずさ、紺野さんからメール来たとき、すっごく嬉しそうな顔してたもん。本当に彼のことが大好きなんだなぁって分かったよ」
「う、うそ!」
「あずさは喜怒哀楽が全部顔に出るから。そういう素直なところ、わたし大好きだよ」
穴があったら入りたい、というのは、今の私の気持ちを指す言葉かもしれない。
ずっと一緒に笑っていられる関係でいたい。友達ならばそれが叶う。
だから、紺野は、かけがえのない大事な私の友達。
「恥ずかしすぎる……。ずっと友情だと思ってたのに、全然違ったみたい」
ずっと一緒にいたい。一緒にいられる関係でいたい。
その気持ちが、そう思った時が、もう恋だった。
千鶴が柔らかく微笑む。
「気付けてよかったね。気付かせてもらえて、よかったね」
颯太が私を諦めないでいてくれたから、今の私達がいる。
颯太が私を諦めていたら、きっと本当の恋も愛も知らないままだった。
「どうしよう、千鶴。あたし颯太のこと、すごく大好きだったみたい」
大好きに気付いた今は、大好きを超えている。
「そのまんま伝えたらいいと思うよ」
「今更遅くないかな」
「遅くない。折角こんなにも素敵な気持ちなんだから、伝えなきゃ勿体無いよ」
千鶴があまりにも真っ直ぐに私を見るから、同じように見つめ返せる私でいたいと思った。
ずっと好きだったって伝えたら、颯太は笑うかな。呆れるかな。
それとも、気付くのが遅すぎるって怒るかな。
無自覚に私の身体を支配してしまうくらい、私の思考を奪うあなたを。
本当はずっと前から……そして、これからも——
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