480人が本棚に入れています
本棚に追加
男女の友情は成立しますか?
舌を絡めても乳房を揉まれても、特に湧き上がる情欲を感じない。
今日が彼との三回目のセックスだ。
私の陰部に触れた彼が、まだ準備が整ってないことを察し再び胸に顔を寄せてくるが、なにをされてもくすぐったいか、最悪痛い。
私に気が付かれないようにしているつもりだろうけど、彼が内心焦っているのが手に取るようにわかる。もう、何度か同じようなことを経験しているからこそ尚更。
「ちょっと待って」
そう告げて、バッグから潤滑剤入りの小さなボトルを取り出して、彼に渡した。
「ごめん…私、濡れにくい体質みたいで…。これ使って?」
「いやでも……っていうか、これまでは普通に濡れてたよね」
「えっ…?……うん…なんか、今日はちょっと調子が悪いみたいで…」
失敗した、とすぐに察することができるくらいには、場数を踏んできてしまった。
少し伝え方を間違えるだけで、男の人のプライドを傷つけてしまうことがある。付き合いたての男女にとって、セックスの相性はデリケートな問題なのだ。
「あずさ、本当に俺のこと好きなの?なんか上の空っていうか、心ここにあらずっていうか…」
そんなことない、とすぐに言い返せない。
「………もう、別れようか」
——嫌だ、別れたくない!
そう喚きながら、泣いてすがれるような私ではない。そして、そこまでの想いではないことも、お互い気が付いている。
「…わかった。今まで、ありがとね!」
湿っぽくならないように、ニコリと笑う。
傷付いていないわけではない。
失恋だし、振られた立場だし、私の中の乙女心は可哀想にしくしくと泣いている。
けれど、私には友だちがいる。
彼氏と別れたくらいで、ひとりぼっちになるわけじゃない。
『ふられた!集合!』
今の時代、この小さな液晶画面に指を滑らせただけでメッセージを送れるのだから、便利なものだ。
ピロン、と間の抜けた電子感がして『了解』のスタンプが表示される。
追加でお店情報と地図を添付してから、シャワーを浴びている彼をよそに崩れたメイクを手直しして、ひとりでホテルを後にした。
最初のコメントを投稿しよう!