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推しのアイドルの熱愛が発覚した。 地下アイドル時代から応援してきて、バイト代は彼女に注ぎこんでいた。 4年間応援してきた推しが、3年前からずっとファン(僕ら)を裏切っていた。 悔しいとか悲しいとか、怒りもあったけれど、何よりも 「(むな)しい…」 ただただ空しかった。 応援してきた気持ちが踏みにじられたようだった。 せめて、ファン(僕ら)にわからないようにしてほしかった。 熱愛発覚の経緯は、彼女の恋人のいわゆる匂わせ投稿だった。 そういうことをするような男を選ばないでほしかった。 “恋愛禁止”のルールを破ってまで、彼と一緒になりたかったのだろうか。 そう思うと余計に空しかった。 恋愛禁止じゃなかったら、匂わせをしてファンにマウントを取るような恋人じゃなかったら、応援できてたかと言えば、それはわからない。 でも、高校生の頃の僕は、彼女が頑張る姿を見て救われた。 僕も頑張ってみようと思わせてくれたのは、地下アイドルとして頑張る彼女の姿だった。 だからファンを裏切る形じゃなかったら、快く応援できた――かもしれない。 後からなら何とでも言える。 実際そうなってみたら、やっぱり応援できないかもしれない。 「はぁ…」 彼女はやっぱりグループをクビになるのだろうか。 僕は、彼女が脱退することを望んでいるのだろうか。 恋人と別れて、初心に戻ってほしい。 そう思う一方で、他の真面目にルールを守っているメンバーの足を引っ張るくらいなら脱退してほしいと思う自分もいる。 正直、どうなってほしいかなんて、自分の気持ちだけれどわからない。 どっちになっても、納得しきれないだろう。 なんて憂鬱な気分になりながら歩いていると、アパートへの帰宅経路をどこかで間違えたらしく、見覚えのない路地にいた。
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