3人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
*
推しのアイドルの熱愛が発覚した。
地下アイドル時代から応援してきて、バイト代は彼女に注ぎこんでいた。
4年間応援してきた推しが、3年前からずっとファンを裏切っていた。
悔しいとか悲しいとか、怒りもあったけれど、何よりも
「空しい…」
ただただ空しかった。
応援してきた気持ちが踏みにじられたようだった。
せめて、ファンにわからないようにしてほしかった。
熱愛発覚の経緯は、彼女の恋人のいわゆる匂わせ投稿だった。
そういうことをするような男を選ばないでほしかった。
“恋愛禁止”のルールを破ってまで、彼と一緒になりたかったのだろうか。
そう思うと余計に空しかった。
恋愛禁止じゃなかったら、匂わせをしてファンにマウントを取るような恋人じゃなかったら、応援できてたかと言えば、それはわからない。
でも、高校生の頃の僕は、彼女が頑張る姿を見て救われた。
僕も頑張ってみようと思わせてくれたのは、地下アイドルとして頑張る彼女の姿だった。
だからファンを裏切る形じゃなかったら、快く応援できた――かもしれない。
後からなら何とでも言える。
実際そうなってみたら、やっぱり応援できないかもしれない。
「はぁ…」
彼女はやっぱりグループをクビになるのだろうか。
僕は、彼女が脱退することを望んでいるのだろうか。
恋人と別れて、初心に戻ってほしい。
そう思う一方で、他の真面目にルールを守っているメンバーの足を引っ張るくらいなら脱退してほしいと思う自分もいる。
正直、どうなってほしいかなんて、自分の気持ちだけれどわからない。
どっちになっても、納得しきれないだろう。
なんて憂鬱な気分になりながら歩いていると、アパートへの帰宅経路をどこかで間違えたらしく、見覚えのない路地にいた。
最初のコメントを投稿しよう!