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一輪のアネモネをあなたに/NEU
すごく人気でいつもなにかの中心にいる私の初恋の人
名前は新堂未來ーシンドウミライー
家も近所で学校もクラスもずっと同じ
幼稚園から高3までの15年間、ずっと同じクラスだった
それなりによく話すし、時々登下校も一緒になることがある
他の女子よりも私との距離が一番近かった
笑顔で話しかけてくれて、いつも楽しそうに私の話を聞いてくれる
だから、期待をしてしまった
本当は期待してはいけなかったのに、願ってしまった
希望を持ってしまった私は、もうあとには戻れない
だがそんなある日、同じクラスに美少女転校生がやってきた
彼女の名前は高良氷愛ータカライアー
彼女はよほど自分に自身があるのか、積極的に彼に話しかけ、遊びに誘っていた
いつもなら何かしら理由をつけて断る彼は、今日は断らなかった
きっと、気まぐれだ
転校生との親睦を深めたいだけだ
私は自分にそう言い聞かせて日々を過ごした
希望を捨てられずにはいられなかった
彼と帰る頻度が減っていった
彼はほぼ毎日のように彼女と遊んで帰った
私が胸に秘めていた心做しの希望は、日々薄れていった
『薄れゆく希望』
彼女に彼を取られるのは嫌だった
だから、休日に遊びに誘った
答えは「YES」
まだ、希望はある
薄れゆく中で、まだ消えきらずに残っていた希望があった
遊園地に行った
最後に乗った観覧車の中で、私は告白した
「ごめん、詩月。俺、氷愛と付き合うことになったんだ。本当に、ごめん」
絶望した
やっぱり、未來は氷愛のことが好きだったんだ
涙が溢れて止まらなかった
でも、初めて未來に下の名前で呼んでもらえた
未來は何度も「ごめん」と呟きながら、私の頭を何度も撫でた
「信じてもらえないかもしれないけど、俺は詩月のこと好きだったよ」
過去形だけれど、それだけで私の心臓は今までにないくらい大きく跳ねた
―――最後に、これだけさせて
そう呟いた未來の顔が段々近付いてきた
額に、キスをされた
たったそれだけのことだけど、未來を諦めるには充分だ
ありがとう、そして、愛してる
心のなかで呟いて私は観覧車を降りる
始まってすらいない夢のような儚い恋だった
けど、未來を好きになって良かった
まるで、紫色のアネモネのようだ
『薄れゆく希望』『儚い恋』
帰り道の花屋で私は紫色のアネモネを買った少しでも私の気持ちを未來に知ってほしくてそれを未來の家のポストに投函してから自分の部屋に戻る
私が未來の心残りになればいい
私を諦めたこと、後悔させてあげる
だから、差出人不明の花を受け取ってその意味を理解することね
自分の部屋に戻ると、私は大泣きした
小4からの長い片想いは失恋に終わった
もう吹っ切ろう
新しい恋を見つけよう
そうひとり心に誓って、翌日、私は晴れ晴れとした表情で学校へ向かった
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