すべはじ 超番外編/明鏡止水

1/1
前へ
/15ページ
次へ

すべはじ 超番外編/明鏡止水

「ベロニカ嬢、最近兄上どうですか?」 「え? いきなりどうしましたか、アインツ様?」 「いや、風の噂で『皇太子が婚約者に冷たい』って聞いたので」 心なしか、アインツ様の声が冷たい。 「うるさいくらいに甘いですよ。毎日のように夜部屋に来ますし、膝枕膝枕うるさいですし、時々殴りたくなるくらいに元気でやかましいですよ」 「そう、それはそれでちょっとどうかと思うけど、冷たいよりはいいか」 「いや、一旦距離を置いてほしいくらいにウザいです」 「じゃあ監禁しちゃえ」 「え、して良いんですか?」 「待って、ベロニカ嬢本気っ!?」 「え、逆にアインツ様は本気じゃないんですか?」 「冗談だけど………」 声が若干怯えてる。 「嘘ですよ。また兄弟ゲンカしたのかと思いました」 「『また』ってなに。喧嘩しないし」 「時々してるじゃないですか、執務室で」 「それはベロニカ嬢のせいなんですけどっ!」 「えーなに。俺の話?」 と、いきなりヴィーが乱入してきた。 「誰もヴィーの話なんてしてない。だからどっか行って」 「嘘つき。てか、俺はアインツと喧嘩なんてしねーから」 「しっかり聞いてるじゃん」 「ま、いーや。手紙(これ)渡しに来ただけだから邪魔物は下がりますよ。じゃ、また後で」 場を荒らすだけ荒らして消えていったヴィー。 「『また後で』って………ベロニカ嬢、兄上となにか約束してるんですか?」 「してないですけど………」 ふたりで顔を見合わせて手紙を開く。 ────────────────────  ベロニカへ  俺的にはどーでもいーけどひとりで読ん  だ方が身のため  アインツとだけは絶対一緒に読むな  一昨日の夜はすごい情熱的で個人的にはす   げー楽しかった  お前もさいっこうに可愛かった  今日も行くから、すっぽかしたらおしおき  な  愛してる  これからもよろしく       ヴァイス  ──────────────────── 手紙を読んだ私は顔を真っ赤にしてアインツから目を逸らす。 そんな微笑ましい義姉(あね)を見て、アインツは優しい笑みを向けた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加