第一話 出会い

1/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

第一話 出会い

「さら、帰ろう!」  教室の扉が、勢いよく開く。  同時に、明るいハスキーボイスが教室中に響き渡った。 「ユカ!早いね」 「迎えにきたよ!帰ろ!」  ユカは私の姿を見つけるなり、ぶんぶんと手を大きく振って言った。 「ちょ、ちょっと待って。まだうちのクラス,掃除終わってないから」  私は慌てて掃除道具をロッカーにしまった。ユカは教室の入り口で、早く早く、と足踏みしている。 「終わった?早く帰ろ!」 「わかったってば」  まるで散歩に行くのを待つ犬のようなその姿に,思わず笑ってしまう。  ユカがこんなに急ぐのには,理由がある。  帰り支度を急いで済ませ、「おまたせ」と言ってユカの元に行くと,ユカが嬉しそうにぴょんと飛び跳ねた。  こんなふうに感情をストレートに態度に出せるのが、ユカのいいところだと思う。 「二人、ほんと仲良いね」  その声に振り向く。声の主は、クラスメイトのさくらだった。さくらは、このクラスで私がよく一緒にいる友人だ。 「でしょー!?」  そう言って、ユカが私の肩に手を回し、さくらに向かってピースして見せた。 「はいはい、仲良し仲良し」  さくらが呆れたように言って、肩をすくめる。  ユカは裏表のない明るい性格で、誰とでもすぐに打ち解けることができる。さくらとも、私に会いにこのクラスに来るうちに、いつの間にかすっかり仲良くなっていた。  そういうところを、本当に尊敬している。  それに、ユカは誰からも好かれる。 クラスのリーダータイプ、という訳ではないけれど、彼女のことを「嫌い」という人を見たことがない。  ギャルも、ヤンキーも、オタクも、真面目な人も、先生も。    みんな、ユカと話している時は楽しそうなのだ。 ユカは人によって態度を変えたりしないし、嘘をついたりしないから、誰からも好かれるのだろう。  人見知りが激しくて、なかなか人と距離を縮められない私とは正反対だ。  そんな私たちが何故こんなにも仲が良いのかというと、共通の好きなものがあるからだ。 「あー、売り切れてないかなぁ、新刊」  ユカがそわそわと落ち着きのない様子で言う。 「さすがに、発売日当日に売り切れはないんじゃない」 「そうかなぁ」 「でも,楽しみだよね。今回は書き下ろしおまけページもあるみたいだし」 「それ!」  歩きながら,顔を見合わせて笑いあった。  今日は,私たちが今ハマっている漫画の発売日なのだ。  私とユカの共通点は、アニメや漫画が大好きということだ。  
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!