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ユカとの出会いは、中学一年生の時。
今は私たちは高校二年生だから、もう五年の付き合いになる。
私たちが住んでいるところは田舎で、中学校も生徒が少なく、二クラスしかなかった。
当時の私は、中学校になかなか馴染めずにいた。
小 学校までは男女の分け隔てなく誰とでも仲良くできたのに、中学生になった途端,周りとのギャップに悩むようになった。
みんな,急に大人になってしまったーーそんな風に感じていた。
私は子供の頃から漫画やアニメが大好きだったから、いつも友達にその話ばかりしていた。それなのに、小学校高学年にもなると、周りの友達は,オシャレとか恋愛とか、別のことにもっと関心を持つようになっていった。
中学に入学すると、それはますます顕著になった。
男子は急に悪ぶりだして、女子はおしゃれに精を出すようになった。
急に変わってしまった友人達に、漫画やアニメの話はしづらくなった。そして、その話題を封じられたら,何の話をすればいいのかわからなくなった。
気付けば,私は周りからすっかり浮いてしまっていた。
気が合う友達もできず、つまらない日々を送っていた。しかし、転機が訪れた。
放課後に委員会の集まりがあったある日のこと。
さっさと帰ろうと支度をしていたら,私は突然話しかけられた。
「ねえ、麻生さんのカバンについてるキーホルダー、日曜の朝にやってるアニメのキャラだよね?」
その声に驚き、私は慌てて顔を上げた。
目の前には、猫のような切長の目をキラキラと輝かせて,真っ直ぐこちらを見ている女子がいた。
私はびっくりしすぎて、すぐには返事ができなかった。
彼女は同じ委員会で、隣のクラスの,土田ユカ。
委員会の集まりの時も,いつも誰かと楽しそうに話している印象の子だ。
明るくて友達が多くて、みんなの中心にいるような存在だったユカは、私とは違う世界の住人だと思っていた。
同じ委員会だけど一度も話したことはなかったから,話しかけられて、ものすごくビックリした。
アニメや漫画が好きそうな雰囲気でもなかったから、おそらくマニアックであろうアニメを知っていることにも驚いた。
「ねえ、そのアニメ,好きなの?」
内心戸惑っている私などお構いなしに、ユカはさらに話しかけてきた。私は挙動不審になりながらも、「うん」となんとか声を絞り出して言った。
ユカはそれを聞き、心底嬉しそうな顔で微笑んだ。
「良かったー!私の他にも好きな人いたんだ!みんな子供向けアニメだってバカにするけどさ、話がしっかりしてるし,めっちゃ面白いよね!?」
そう生き生きと語るユカの姿に,私は呆気に取られて言った。
「土田さん、アニメとか見るの?」
ユカは笑顔で答えた。
「全然見るよ!漫画も超好きだし」
驚きながらも、私は嬉しくなった。
でも、人目憚らず堂々と話すユカに対し,私は挙動不審になってうまく話すことができなかった。
中学に入ってから,いわゆる「オタク」を馬鹿にする人たちもいるのだと知ったから。
小学生の時は私とも漫画の話をしていた友人が、中学生になった途端、「オタク」と言って笑っているのを見てしまったことがある。
それ以来、人前で漫画やアニメの話をすることは控えていた。
けれどユカは、周りの目なんて気にせずにアニメの話を続けた。
「土田さん、……その、恥ずかしくないの?」
「何が?」
「その……アニメの話をすること」
「なんで?」
「なんでって……、その、オタクだと思われちゃうよ」
「思われちゃうってか、オタクだし」
そうあっけらかんと答えるユカが、輝いて見えた。
何が恥ずかしいのか全くわからないーー本気でそんな顔をしていた。
私は久しぶりにアニメの話ができた嬉しさもあったけれど,何よりユカのその人柄に惹かれた。
その日はそのまま一緒に下校して、好きな漫画やアニメの話で盛り上がった。全然話足りなくて、神社の階段に座り込んで話し続け,気づけば辺りは真っ暗になっていた。
それ以来、ユカとはお互いのクラスを行き来して漫画を貸し借りしたり、待ち合わせをして帰ったり、休みの日には遊んだりと、一緒に過ごすようになった。
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