第一話 出会い

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 それを裏付けるような、決定的な出来事があった。  ある日のこと。  ユカが何かスマホで検索をかけると、アニメキャラの男二人が抱き合っているイラストが表示されてしまった。 「わ、ごめん。変なの出た」  ユカはそういって、こともなげにその画像を消した。けれど私は、ユカの言葉が頭の中で響きわたって,その後の会話が頭に入ってこなかった。 (変なの、出た)  もしユカが腐女子であるなら、絶対に出ない言葉だ。そう思った。  そして確信した。  ユカは腐女子ではない。  純粋に作品が好きな、ただの「オタク」なのだ。  オタクの定義なんて、私は知らない。  けれど、腐女子の定義はわかる。    それは、「BL、つまり男同士の恋愛が好きなこと」だ。  腐女子じゃないならば、BLに拒否反応を示すかもしれない。私が腐女子だとわかったら、ユカはどう思うだろうか。 「気持ち悪い」と思うのだろうか。  もしかしたら、私と距離を置こうとするかもしれない。  ユカはそんな子じゃない。  そう思うけれど、否定しきれない自分が嫌だった。  腐女子じゃない子が、腐女子をどう思うかがわからない。だって、私は腐女子だから。  中学に入ったばかりの頃、話しかけてくれた子に、小学校までのノリのままその時ハマっていた漫画を熱く語ってしまったことがある。  その子は若干引いた様子で、笑って言った。 「へー、ごめん。ぜんっぜんわかんないや。麻生さん、めっちゃオタクじゃん」  そう言い捨てて、その子は私の席から離れていった。別の子に話しかけて、楽しそうに雑談するのを、呆然と眺めていた。  彼女の、鼻で笑うような態度が忘れられない。  あの日初めて私は、好きなものを語るのは恥ずかしいことなのだと思ったんだ。    思い出すと、消えてしまいたい気持ちになる。  あれ以来、堂々とアニメや漫画の話をするのはやめた。好きなものの話を誰かとすることが、怖くなった。  それを変えてくれたのがユカだった。  けれど、もし、ユカにあの日の彼女と同じような態度を取られたらと思うとーー怖くて言えない。 「私は腐女子だ」って。  ユカに離れていかれたら、二度と立ち直れないかもしれない。  だから絶対に、隠し通そう。  そう決意した。
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