第二話 現在

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第二話 現在

 高校二年になった今でも私は、腐女子であることをユカに隠し続けている。 「あれ、さら、まだ帰ってなかったの?」  放課後、一人で教室に残っていると、同じクラスの森脇美和が現れ、話しかけてきた。  美和は、高校に入ってすぐ仲良くなった友人だ。  二年になった今も同じクラスで、よく行動を共にしている。 「うん。美和は部活じゃないの?」 「今日はミーティングだったんだ。忘れ物とりに、教室寄ったの。さらは?」 「私は、ユカが委員会終わるの待ってる」  私が言うと、美和が笑った。 「二人、ほんと仲良いね」  私とユカがしょっちゅうクラスを行き来しているのを見てるから、そう思うのだろう。  スマホのあるこの時代に、わざわざ手紙のやりとりを頻繁にしている私たちを、お互いのクラスメイト達は物珍しげに見ていた。  ユカなんて、私のクラスに来すぎて、美和や他のクラスメイトともすっかり打ち解けているくらいだ。 「ユカ、遅いな。ちょっと、ユカの教室行ってみる」 「うん、また明日ー」  美和に別れを告げ、ユカの教室を目指す。  目的地が近づくと、楽しそうな笑い声が聞こえた。 (ユカの声だ。誰と話してるんだろう)  つい姿を隠し、そっと教室を覗き込む。ユカがクラスメイトと向かい合って座り、楽しそうに話しているのが見えた。  その様子に、ちくりと胸が痛くなる。  ユカに友達が多いことなんて、最初からわかっている。そのはずなのに、自分といる時より楽しそうじゃないか?なんて、焦ってしまう。  そんな自分にもやもやする。  ユカほどじゃないけれど、私だって友達と呼べる子はいる。美和だって、その一人だ。  けれど、一番の親友は誰か?と聞かれたら、迷うことなくユカだと答える。  けれど、ユカはどうだろう。  「さらが一番だよ」って、言ってくれるだろうか。  中学の時だってたくさん仲良い子がいたし、学校が違う幼馴染のことだって、よく話に出てくる。    自分がユカの一番である自信は……残念ながら、ない。  だからこそ、嫌われたくなくて。  腐女子であることも、言えないでいるのだ。
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