0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「あれー?さら!?」
ユカの明るい声で呼ばれ、ビクッとした。
私に気付いたユカが、ブンブンと大きく手を振っている。
「迎えにきてくれたのー?」
ユカと話していた相手が、私をじっと見つめている。
私は彼女のことを知っている。
確か名前は……小川さん。
オガワがー、と、ユカが何度か話すのを聞いたことがある。
ユカによれば、小川さんもかなりのオタクだとか。
コスプレなんかもしていると聞いたことがある。
ふと、ユカの手元に視線がいった。そして、私は固まってしまった。
ユカの手に握られているもの。
教科書でも漫画でもない、薄い本。
それはーー紛れもなく、同人誌だった。
…………は???
なんで??
なんでユカが、同人誌を持ってるの???
混乱し、言葉を失っている私に構わず、ユカが喋り出す。
「いまねー、これ小川に読ませてもらってたんだ!」
そういって、同人誌を目の前に掲げるユカ。
凝視していいのか,目を逸らせばいいのかわからなくて,戸惑ってしまう。
(なるほど…小川さんのか)
納得した。
小川さんも、こちら側の人間だったのか。
そう思いながら、ユカの掲げる本の表紙を見て、目玉が飛び出そうになった。
そこに描かれていたのは、私が今まさにハマってる作品の、推しカプの二人が描かれていたからだ。
SNSを毎日徘徊しては、神絵師や神作家の作品を堪能する毎日を送っている。
私は自分では作品を生み出さない、いわゆる「見る専」だ。けれど、毎日この二人で妄想する日々を送っていた。
そんな大好きなカプをいきなり目の前に出され、頭が真っ白になった。
ユカの前だ。
あくまで、「へー、何これ?」という、知らないふりを装わなければ。
それなのに、うまく言葉が出ない。
ユカが言う。
「これ、小川が描いたんだって。すごいよね!」
!?!!
小川さん、作る側の人間だったのかーー。
いや、それだけじゃない。
表紙をじっと見つめる。
めちゃくちゃ、上手い。
プロかと思うほど絵が上手い。そして気付いた。
この絵柄…、見覚えがある。
間違いない。
私がSNSでいつも見ている、憧れの神絵師の絵とそっくりだ。
(小川さんが……私の推し神絵師!?)
最初のコメントを投稿しよう!