第二話 現在

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「あれー?さら!?」  ユカの明るい声で呼ばれ、ビクッとした。  私に気付いたユカが、ブンブンと大きく手を振っている。 「迎えにきてくれたのー?」  ユカと話していた相手が、私をじっと見つめている。  私は彼女のことを知っている。  確か名前は……小川さん。  オガワがー、と、ユカが何度か話すのを聞いたことがある。  ユカによれば、小川さんもかなりのオタクだとか。  コスプレなんかもしていると聞いたことがある。  ふと、ユカの手元に視線がいった。そして、私は固まってしまった。  ユカの手に握られているもの。  教科書でも漫画でもない、薄い本。  それはーー紛れもなく、同人誌だった。  …………は???  なんで??  なんでユカが、同人誌を持ってるの???  混乱し、言葉を失っている私に構わず、ユカが喋り出す。 「いまねー、これ小川に読ませてもらってたんだ!」  そういって、同人誌を目の前に掲げるユカ。  凝視していいのか,目を逸らせばいいのかわからなくて,戸惑ってしまう。 (なるほど…小川さんのか)  納得した。  小川さんも、こちら側の人間だったのか。  そう思いながら、ユカの掲げる本の表紙を見て、目玉が飛び出そうになった。  そこに描かれていたのは、私が今まさにハマってる作品の、推しカプの二人が描かれていたからだ。  SNSを毎日徘徊しては、神絵師や神作家の作品を堪能する毎日を送っている。  私は自分では作品を生み出さない、いわゆる「見る専」だ。けれど、毎日この二人で妄想する日々を送っていた。  そんな大好きなカプをいきなり目の前に出され、頭が真っ白になった。  ユカの前だ。  あくまで、「へー、何これ?」という、知らないふりを装わなければ。  それなのに、うまく言葉が出ない。  ユカが言う。 「これ、小川が描いたんだって。すごいよね!」 !?!!  小川さん、作る側の人間だったのかーー。  いや、それだけじゃない。  表紙をじっと見つめる。  めちゃくちゃ、上手い。  プロかと思うほど絵が上手い。そして気付いた。  この絵柄…、見覚えがある。  間違いない。  私がSNSでいつも見ている、憧れの神絵師の絵とそっくりだ。 (小川さんが……私の推し神絵師!?)
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