その1

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その1

博「ハンスくん、ハンスくん!」 助「なんですか、騒々しい」 博「出来たんだ! 遂に、遂に……」 助「勿体つけないで教えてくださいよ」 博「しばらく感動の余韻に浸りたい……」 助「落ち着いたら、また呼んでください。僕は、ゆで卵の火加減を見てなきゃならんのです」 博「今日の昼食はなんだね?」 助「スクランブルエッグに、たまごサンド、足りなきゃ目玉焼きもつけましょうか?」 博「昨日はプレーンオムレツだった」 助「仕方ないでしょう! あんたが卵ばっかり生ませるから! てゆうか、この研究所にはガチョウの卵しかありませんよ!」 博「君には苦労かけるな……」 助「いえ、僕も言い過ぎました」 博「ときに、ハンスくん。儂は、遂に成功したのじゃ!」 助「落ち着きましたか。それで、なにをです?」 博「出来たのじゃ。遂に、“金の卵を生むガチョウ”がな!!」 助「ええっ、つ、遂に、ですか?!」 博「うむ。これで学会のヤツらをギャフンと言わせてやる」 助「……ギャフン、て(死語)」 助「それで、これが“金の卵を生むガチョウ”なんですね!」 博「そうだ。気が遠くなるほど試行錯誤を繰り返して誕生したのが――これじゃ!!」 助「……意外と普通のガチョウですね。白いし」 博「フフフ。わかっとらんな、ハンスくん! とくと見るのだ!」 助「あっ、ガチョウが……!  ――コロン 助「わああっ! 金だ! 本当に、金色の卵を生んだぁっ!!」 博「ハッハッハッ」 助「凄いですよ、博士! これで、僕達も一攫千金……! もうガチョウの卵だけの食卓なんてオサラバですね!」 博「そうだとも! ハッハッハッ」 助「この卵から生まれるヒナも金色なんですか、博士?」 博「いや、そこはまだ研究途中じゃ」 助「いやぁ、卵だけでも凄いことですよ!」  ――翌日。 助「博士、大変です!!」 博「なんだね、ハンスくん」 助「あの新種のガチョウの卵が……!」 博「……」 助「卵が、まだら模様なんです! まるでウズラみたいに、金にが出来て……」 博「仕方なかろう」 助「え?」 博「餌として食わせる金が、もうないのだ」 助「……え? え、餌が金?!」 博「当然じゃろう」 助「えっ、じゃあ、アレですか? このガチョウって、金を食わせないと、金の卵を生まないんですか?」 博「うむ。無いものは生み出せんからのぉ」 助「…………プラマイゼロじゃ、しょーもないでしょ!!」
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