進行と奮闘

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 扉を開け放つやいなや、ブラントは室内の状況を即座に見てとった。明かりのない狭く細い廊下の壁沿いに、銃を構えた屈強な男たちがずらりと並んでいる。彼らは闇に溶け込むような灰色の装備を身に着けていた。  室内に足を踏み入れた途端、こちらを向いていた銃口が一斉に火を噴く。 「・・・・・・ぬるいな」  つぶやくと同時に腰を低く沈め、ブラントは床を蹴った。一瞬で間合いを詰めると、轟音のさなか、銃を向けられないほどの近距離から蹴りを放った。体をくの字にして男のひとりが吹き飛び、床に叩きつけられる。泡を食った他の男らは無闇に発泡をし続け、狭い廊下の壁に次々と銃弾がのめり込んでいった。   ろくに訓練もされていない素人の発砲だ。銃身が各々でぶれている上に訓練通りの一斉水平射撃で、避けるのが容易い。ブラントは半ば同士討ちとなりつつある中を駆け抜け、死体の手から落ちた銃を拾った。  残りわずかの残弾をすべて連中の頭に命中させる。廊下に構えていた者は皆、脳天から血を吹いて突っ伏した。  この場にいる敵は全員(たお)した。だがこんな雑魚など、ヴィラルバージョにとっては捨て駒でしかないだろう。その最低の駒が意外にも多かったことは、予想外だった。  ブラントは、手元にある銃を見下ろした。  既に返り血を浴び続けた赤い手が、何気なく殺人のための道具を握っている。この姿を見て、イリアーナ姫は恐らく自分のことを恐れるだろう。  ──そうであったとしても、自分は彼女を守る盾でありたい。  目を閉じて深く息を吸った。血と硝煙の匂いしか、しなかった。
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