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低い姿勢で前方に跳躍し、ナイフを振るとブラントは男らの喉を二人分掻き切った。血しぶきを交わすように伸び上がり、前にいた敵の間合いに飛び込んで銃を持った腕を捻る。
武器を取り落とした兵士の顎に掌底を食らわせるものの、寸前で防弾布に覆われた腕がガードした。金属音が響き、右手にじんとした痛みが走る。
背後に撃鉄を起こす音を聞くと同時に前転しながら距離を取り、左手に握ったナイフを振り抜く。敵のこめかみを切り裂いた手応えを感じたときには、ブラントはとうに先程の兵士の死角に回っていた。下からナイフを振り上げ、刃を喉に沈める。
再び大量の血液とともにナイフを抜いたときには、絶命していた。
悲鳴と血の跳ねる音が連続する。狭い室内に反響する自分の足音を聞きながら、ブラントは気配に再度振り返った。大柄な男が手を伸ばそうとしている。ナイフを水平に振り抜いたが、一瞬はやく見切られた。
振り切ると同時に腕を掴まれ、直後、肩がもげるような激痛が走る。
あっという間に数人がかりで取り押さえられ、四肢を拘束するように羽交い締めにされた。手から無理やりナイフがもぎ取られ、虚しく床に落ちる。
後ろに回った三人の男はみな大柄で、小柄なブラントは身じろぎもできずにいた。
黒い前髪を掴んで無理やり顔を上げさせながら、目の前の男がにやにやと笑った。
「ふん、随分と甘やかされて育ってきたような面してんな」
「そうだなあ。こうやって捕まえちまえば動くことも──」
だが、首を掴む髭男が言い終わるよりはやく、ブラントは袖に仕込んであった細い銃剣を抜いた。
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