5人が本棚に入れています
本棚に追加
引き抜いた銃剣が腕を掴む男の喉を水平に切り裂くのに、一秒も要さなかった。血しぶきが背に跳ねて、人間の崩れ落ちる重い音がすると同時に、ブラントの片手は自由になった。
左腕と首元を掴む二人の男はさすがというべきか、とうに抜いた銃剣を振りかぶっていた。
しかしブラントからしてみれば速度は遅い。自分の喉元に刃が届くよりはやく、下方から片方の太い腕に銃剣を突き刺す。二の腕を串刺しにされ、さらに剣を引き抜かれた髭男は膝をついてうめいた。
かがんで反対側から迫るもう一つの銃剣を躱しながら、床に落ちていたナイフで髭男の心臓を一突きにした。立ち上がる勢いで銃剣でこちらを狙うその男の手を勢いよく蹴り上げた。
案の定、男は銃剣を手放さなかった。剣を逆手に握り、突き刺そうとしてくる。だがそれを予測していたブラントは、後ろに迫りくる殺気を感じながらひょいと横に身を躱した。
銃剣を振りかざしていた男は、ブラントの背後から勢いよく突っ込んできた男に盛大な蹴りを見舞われた。もしも気づけていなかったら、ブラントは脊椎をやられていただろう。
しかし、小柄なブラントとは対象的に、彼は巨大な体躯の持ち主だった。
急所に本気の蹴りを食らった男が、銃剣を投げ出して絶叫した。苦しそうに悶絶する彼を飛び越え、先程蹴りを放った男に背後から切りつけた。
「こ、この・・・・・・!」
瞬時に振り向いた彼の顔面に、ありありと浮かぶ憤怒。だが、これでも怒りをこらえているの自分だ。
「よくも、イリアーナ姫を!」
叫ぶと同時に、ブラントは怒りにまかせて男の胸ぐらを掴んだ。
最初のコメントを投稿しよう!