新宿沙絵vol.3 ・パイナップルの棘

12.園子ママの魔法

　京太郎……あんたと沙絵と、酒が飲めるようになるまで生きていられて、本当に良かった。長生きなんて苦しいばかりだと思っていたけれど、あんた達の存在が、どれほど私を幸せにしてくれたことか。
　ごめんね、もっとアンタに沙絵スペシャルを作ってあげたかった。でもね、あんたには政ちゃんがいる。彼にレシピを書き残すから、沙絵に会いたくなったら、作ってもらいなさい。
　幸せになるんだよ、京太郎。幸せになることに、もっと貪欲におなり。
　アンタには、その権利がある。

　店だけど、アンタと政ちゃんとで、続けてもらうことはできないかしら。もちろん、沙絵の店もあるし、若いアンタにはお荷物かもしれない。でもね、アンタのその優しさで、逃げてきた大馬鹿野郎達を助けてやって欲しい。ババァのワガママ、最後に一つだけ、聞いてくれたら嬉しい。

　京太郎、本当にありがとう。
　今まで私を沢山幸せにしてくれて、本当にありがとう。
　私があと30歳若かったら押し倒してるわよ(笑)

　沙絵と一緒に、いつもアンタを側で見守っているからね。
　アンタは一人じゃないよ。