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中二の六月。教室の窓からは梅雨らしいしとしとした細い雨が降っている。
誰も居ない二年A組。
私、蕨美姫が人生で一番恐怖を味わった日。
その日は担任に呼び出されていた。
言い知れぬ不安感を抱きながら、自分の席に座り、待っていた。
時刻は夕方五時を少し過ぎていた。
焦った様子の若い担任が入ってくると私の席に近づき「君がずっと好きだった!」と突然の告白をしてきた。
周りの女子にはイケメンで人気があるらしいが、私は冷めた目でその風潮を見ていた。
「………」
いきなりの事で言葉を失う。
席を立ち、その場を去ろうとすると、腕を掴まれ引き寄せられた。
「行かないでくれ」
シャツの柔軟剤の匂いに、行動、言動に鳥肌が広がる。
身が強張り、体の自由が効かない。
廊下から話し声がすると、掴んでいた腕の力が緩む。
「嫌っ!」
そう言って私は慌てて教室を離れた。
怖くて怖くて仕方なかったーーーー。
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