5.父の押せ押せな攻勢?

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「それと、君の父上が紹介をしてくれたのなら、いずれはあいさつもきちんとしなければな」 「あっ……はい」 彼の一言一言に、さっきまで(かす)みのように広がっていたモヤモヤが、パァーッと晴れていく気がする。 「では、ブライダルフェアへいつ行くか予定を立てようか。早い方がいいだろう」 言いながら彼が椅子に座り直すと、「パンフレットを一緒に見よう」と、私を促した。 「はい……」と、自分も改めて腰を落ち着け、テーブルの上にパンフレットを見開いた。 「あのホテルで、行われるのか」 彼がページをめくりつつ呟く。 ──それは、よく雑誌などのメディアにも取り上げられる、ガラス張りの挙式場が有名なハイクラスのホテルで、父の相変わらずの押せ押せなムードが感じられた。 「あの、私は、別にここではなくてもいいので……」 折に触れ何かと気張る父の姿が透けて見えるようで、気恥ずかしい思いで口にする私に、 「このホテルなら、客室にクーガの製品の取り扱いがあるから、こちらの融通も利くかもしれない」 そう喋る彼に、目の前のこの人は、あの大企業KOOGAのトップなんだということが改めて思い出されて、自分がそんな人と結婚をすることが、お父さんとの話でもしたけれど、まるで夢物語のようにも感じられるみたいだった。
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