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 「フレディ!」  唐突に執務室のドアが開いて、愛しの妻(仮)がなだれ込んできた。 「どうした? ランカ?」  土地の基本台帳の書き換えのチェックをしている俺のすぐ脇にいた侍従のノインと、護衛のアインがアイコンタクトを寄越す。  俺が片目を閉じると、執務室のドアから二人揃って退室していく。 「あのね、お願いがあるのよ」  もじもじと執務机の前にやって来て顔を赤くする妻(仮)は今日も尊い。  ――ああ、直ぐにでも押し倒したい。  いかんいかん、油断するとつい本音が出る。 「お願いとは珍しいな?」  執務机から離れて、彼女に近づくと後ろ手にして持っていたらしい皿をおずおずと前に出す妻。 「? なんだコレ?」 「クッキーなの」 「いや、見りゃ分かるが、なんだって緑色なんだ?」  ――ピスタチオだろうか? それとも意表をついてほうれん草か? 「枝豆なの」 「は? 枝豆?」  ――って? ビールのおつまみのアレか? 塩茹でしてポチッとな、で喰うやつかよ? 「あのね、コレ。私が作っったの。食べてくれる?」  嬉しそうに笑顔になる妻(仮) 「・・・・おう」  ――前世から料理のセンスはアルマゲドン並みの彼女が作ったのか?? 厨房が壊れて無いだろうな。  徐ろに赤いベルを懐から取り出し『チリン』と鳴らすフレデリック。 「旦那様、お呼びでしょうか」  別邸の執事長である初老の男、アーネストがドアを開けて現れる。  チョイチョイと指で、『ヘイ、カモ~ン』と呼び寄せて耳元で 「厨房は無事か?」  と、問う。黙って頷くアーネスト。 「大掃除で済みました」 「ヨシ。特別手当出しといてやってくれ」 「畏まりました」  小声でやり取りを済ませ退室していくアーネスト。  その間に連れてきていたらしいメイドにお茶の指示をしているカサブランカに目を向ける。  メイドの表情が微妙に引き攣っているのが非常に気に掛かるフレデリックである。  
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