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二人は社務所で絵馬をもらい、願いごとを書くことにした。この神社の絵馬はよくある五角形だけでなく、可愛いハート形もある。さすがは縁結びのご利益を授かれる神社だ。
『わたしたち夫婦の絆が、永遠に続きますように。 絢乃』
『永遠のおしどり夫婦でいられますように。 貢』
婚姻届を記入した時に初めて気づいたのだけれど、貢はなかなかの達筆なのだ。奉納した絵馬にも、読みやすく丁寧な文字で願いごとが認められていた。
「――ねえねえ貢、〝夫婦守り〟っていうのがあるよ! 買っていこ♪」
授与所でお守りを眺めていたわたしは珍しいものを見つけ、貢のパーカーの袖を引っぱった。
そのお守りは「夫」と刺繍されている青いお守りと「婦」と刺繍されている赤いお守りが二つセットで真っ白な箱に収められた状態で売られている。一つずつお揃いで持っているというのが正しい持ち方なのだろうか。
「いいですねぇ、買いましょう。あと、子宝祈願のお守りも頂いておきます?」
「あー…………、うん。そうしようかな」
わたしは「子宝」という単語に思わず赤面してしまった。こういうところ、わたしはまだまだ子供だなぁと思う。
そりゃまあ、わたし自身も子供はほしいけど。貢が望むなら、一人といわず二人でも三人でも産みましょうっていう気持ちではいるけど。
……というわけで、夫婦守りと子宝祈願のお守りも授与してもらい、わたしたちは順路をさらに進んでいった。
周囲にあるパワースポットも制覇し、船で南あわじ市の東の沖に浮かぶ沼島に渡ると、ここにも「自凝神社」があった。
「――ねえ貢。古い文献によると、国生み伝説の舞台になった〝おのころ島〟っていうのはこの沼島のことみたいだよ」
わたしは神社へ向かう道すがら、スマホの画面を見ながら貢に説明した。ここからは山道が続く。わたしよりは体力のある貢はともかく、運動オンチなわたしには、この山道はかなり堪える。
それにしても、ネットの情報って侮れない。自分が今まで知らなかったことも簡単に拾えてしまうんだもの。
「へえ、そうなんですか。淡路島のことじゃなかったんですね」
「うん。まぁ、諸説あるみたいだけどね」
〝おのころ島〟に関する伝承は、淡路島沖に浮かぶ別の島や、山陰地方にもあるらしい。さすがはこの「日本」という国を作った神様たち、そんなあちこちに伝説が残されているなんて。
わたしたちはこの神社にも参拝していくことにした。ご利益はやっぱり「縁結び、恋愛成就」らしい。もしかしたら「夫婦円満」のご利益もあるかもしれない。
境内にはイザナギ・イザナミの二神をかたどった石像も建てられている。この二神像にも手を合わせてから、わたしたちはさらに山道を進み、上立神岩を目指した。
目的地へ着いた頃にはもう、お昼近くになっていた。貢は去年の夏ごろから鍛えているらしいからまだ体力は残っているみたいだけれど、元々運動オンチだったわたしはもうクタクタだ。空腹も相まって、疲れがピークに達する手前である。
でも、その時不思議な光景が目の前に広がった。
「――わぁー……、天使の梯子だ! 見て見て、貢!」
雨はもうすでに止んでいて、雲の隙間から日の光が差し込んでいる。その神秘的な光景は吉兆の表れだという説があるのだ。
「ええ、すごくキレイですね。雨も止みましたし、こんなに神秘的な光景が見られるなんて……」
「いい旅行になったね、貢」
淡路島に来て二日目で、お天気にはあまり恵まれなかったけれど(まぁ、梅雨時だから仕方ないかもしれないけど)。東京にいたらめったに見られないこんな神秘的な光景が見られるなんて、国生みの神さまたちが歓迎してくれているということだ。そして、わたしたちの結婚を祝福してくれているのだと思う。
「こうやって神さまたちが祝福してくれてるんだもん。わたしたち、絶対幸せになれるよ」
「そうですよね。絶対、幸せになりましょう」
改めて夫婦の絆を確かめ合ったところで、わたしたちは山を下りることにした。
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