淡路島、最後の夜

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「早く東京に帰りたいのはホントだよ。でもなんか、貴方と二人きりの時間がもうすぐ終わっちゃうんだなぁって思うとさ、ちょっとしんみりしちゃって。この旅行が楽しすぎたから」  旅の終わりというのは、いつも淋しい気持ちになる。非現実的な時間から、もうすぐ現実の日々に戻るんだと思い知らされてしまうから。  これまでと違うのは、この旅行を終えて東京に帰ってもずっと貢が(そば)にいてくれるということ。彼と一緒にいられることがこれからの「現実」になるのだ。でも、それと彼と二人きりの時間をずっと過ごせるかどうかはまったく別の問題なのだ。 「……確かに、旅先での時間って何だか特別な気はしますよね。あの家で、周りの人の目を気にしないでイチャイチャするっていうのは難しそうですし」 「う~ん、それはまた別の話かな」  彼の言う「イチャイチャ」の意味を理解して、わたしは赤面した。確かに、家の中で毎晩のように夫婦の営みをするのはちょっと……。いくらこれから先、夫婦の寝室として使う部屋の壁が防音だといっても。  ちなみに、わたしの部屋は今後、そのまま書斎として使うことにした。  それはともかく、毎晩あれだけ激しく求め合うというのは旅先での解放感が成せることかもしれない。 「でも、これからもたまにはこういう機会があったらいいよね。泊りがけの旅行がムリでも、お休みの日には今までみたいに二人で出かけたりしよう」  休暇が明ければ、お互い仕事に追われる立場となる。貢はもしかしたら専務に就任して、経営にも関わることになるかもしれない。だからこそ、二人きりで過ごす時間が今まで以上に必要になるはずだ。そうすれば、いつまでも新鮮な気持ちでい続けられるから。  母だって、新婚夫婦をジャマするような無粋な人ではないのだし。 「そうですね」  ――こうしてまたわたしの箸は進み、彼はビールの瓶を一本カラにした。小瓶にしてよかったかも。中瓶以上だったら彼は飲みきれなかったと思うから。 「あー、わたしも早くお酒が飲めるようになりたいなぁ。夫婦で晩酌するの、ちょっと憧れてるんだよね」 「あと一年くらいガマンしたら、絢乃さんも飲める年になるじゃないですか」 「そうだけど……」  もしそれまでに子供ができたら、妊娠~出産~育児で飲酒は当分お預けになる。はぁー、女性ってツラい。    * * * *  今夜は二人とも疲れているし、明日は午前中にチェックアウトして神戸まで戻らないといけないので、入浴後は布団に入ると行為をせず、そのまま眠ることにした。さすがに四夜連はわたしの体力がもたないし、彼だってそこまでの体力オバケじゃないだろう。  ……でも。彼はわたしに甘えたいようで、布団の中でわたしの胸にもたれかかってきた。 「……んもう、貢、重いよ。まったく、甘えんぼさんなんだから」  何だかんだ言って、わたしもイヤではないので、無理矢理彼の頭をのけるようなことはしない。彼の髪を撫でながら、何だか母親になったような気分になる。男の人って基本、甘えんぼなのかもしれない。  彼の体温を胸に感じつつ、体の中心に熱のこもる場所がある。わたしは彼の寝息を聞きながら、久しぶりに自分の手でソコを慰め始めた。浴衣の裾をたくし上げ、下着の中に手を滑り込ませると、ソコは溢れた蜜でぐっしょり濡れていた。 「……ぁあ……♡ あぁ……ん♡」  横で彼が目を覚まさないかというスリルを感じながら、自分の指で敏感な肉芽をいじると小さな声が漏れた。  何だろう、この背徳感。彼とするようになる前の、イケナイことをしていた頃みたい。何だか余計に興奮して早くも絶頂の波が来そうだ。  「……は……ぁっ、ぁあ……ん。…………あぁー……っ!」  目の前が白くスパークし、今夜は彼の知らないところでわたしはひとり達したのだった。
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