最悪の一日

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 どうしてせめて二股掛けてたこと黙っておいてくれなかったの。静かに価値観が合わないと、考えが合わないと言ってくれれば、ここまで辛い気持ちになることはなかったのに。 「くそ」  泣きそうになるのを必死に堪え、ようやくコーヒーに手を伸ばした。苦くて香りのよいそれは、私が大好きな味なのに、もしかしたら今後コーヒーを飲めなくなるかもしれないとすら思った。  プラス思考に行くんだ!  あんな男、別れて正解だ。どこの誰かも知らないが、奪ってくれてありがとう。私には勇太がいる。  生憎、いつまでも引きずってられるほど暇ではない。働いて、家事もこなさねば。受験生で忙しい勇太もさすがに今はバイトを控えているので、私が頑張るしかない。
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