最悪の一日

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 その声を聞き、ただ事ではないと気がつく。何があったか問いただそうとして、すぐ近くにアパートがあることを思い出す。もう目と鼻の先だ、行った方が早いではないか。  私はスマホを耳に当てたまま走り出した。  二階建て、築三十五年のボロアパートの上角部屋が、私たちの家だ。やたら足音が響く外階段を上り、見慣れた木製のドアの前に立つ。鍵を開けて中に入り、短い廊下を抜けた。ギシギシと床が鳴る。 「勇太!?」  狭い和室に飛び込んだ。そこではっと息を止める。  小さな古いテーブルの前に、勇太が青い顔をして正座で座っている。その正面に、スーツを身にまとったガタイのいい男性が二人笑いながらこちらを振り返った。  顔を見ただけで分かる相手の職業。頭の中が真っ白になる。 「おーお姉さまのお帰りか」  笑いながら立ち上がった男たちは、二人とも背が高く大男だった。一人はスキンヘッドの髭面、もう一人は馬顔の出っ歯だ。その様子に、つい私も後ろにたじろいだ。 「ど、どちら様ですか?」  さすがに声が震える。髭面が答えた。 「弟くんには話をしたよ」 「勇太?」
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