最悪の一日

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「……ごめん、あまりに呼び鈴を鳴らしてドアを蹴るから開けちゃって……この人たち、金を返せ、って」 「金?」  ぽかんとしてしまう。うちは貧乏だが、借金などは遠い存在だ。私も勇太も、そんな馬鹿なものには手を出さないと心に決めている。  私は髭面の方に言った。多分、こっちの方が立場が上そうだ、と勘が働いて。 「間違いです、うちには借金なんて」 「はいこれどうぞー」  男は胸ポケットから一枚の紙を取り出し、私ににやつきながら見せつけた。しわくちゃになったペラペラの紙には、難しそうな言葉が羅列している。だが真っ先に私がとらえた文字は、手書きの部分だった。  癖のある右肩上がりの字、見覚えのある名前。 「…………は」  息が止まる。 「はい、服部幸太郎、君たちのお父さんだよね? 連絡取れないしー連帯保証人も飛んじゃったみたいだし、じゃあ子供たちに責任取ってもらわないと」  行方知れずになっているあのクズ親父のサインだ。そしてそのすぐ近くに書かれた数字が目に入る。  三と、ゼロが……七つ。
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