最悪の一日

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 一気に部屋が氷点下まで下がった気がした。だらだらと服の下に汗をかきまくる。それでも口から出した言葉はすっとぼけたものだ。 「違いますけど? うちの父親はそんな人じゃ」 「んー嘘はよくないね。俺たちに嘘ついてどうなると思う?」  ずいっと顔を寄せられ笑われた。タバコのヤニで黄色く変色した歯に嫌悪感を覚える。ごまかすなんて無駄だ、とすぐに悟った自分は、ちらりと契約書と思われるものを目で追った。  あのバカ親父がサインしたのは間違いない。でも、どこからどう見ても闇金で、無茶苦茶な利子が計算されてあのお金になったんじゃないだろうか。だとしたら不当な請求では? こういう時どうすればいいんだろう、一度誤魔化しておかえり頂き、警察か、弁護士とか……  頭の中で必死に考えていると、突然強い力でぐいっと肩を掴まれた。馬の方の男だった。やつは凄んだ声で私に言う。 「余計なこと色々考えてるわけじゃないよねー? 借りたものは返さないとさ、素直に従わなかったらどうなるか分かる?」
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