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「弟思いだな。お前は本当に強い。この仕事を持ち掛けたのはほんの思いつきだったが、お前に任せてよかったと思う」
「……まあ、普通のご令嬢はあのイビリに耐えられないだろうね」
「だろうな、普通はそうだよ。正々堂々受けるのはお前くらいなんだよ」
なんだか楽しそうに玲が笑う。するとふと、ソファに置いてあった自分の手に、玲の手が重なった。大きな熱い手が自分を包み込む。
驚きと、でも突っ込んではいけない気がして、私は黙っていた。徐々に指を絡め、しっかりと手を握られる。困り果てつつも、それを握り返してみると、少しだけ驚いたように彼の手が反応した。
今は周りに人もいないのだから、夫婦のフリなんてしなくていいはず。それでも、しっかり握ってくる手を振り払えるわけもなく、溶け合う体温に身を委ねた。
「……誕生日なんて、そんなにいい思い出なかったけど、今日はいい一日だった。ありがとう」
「……どういたしまして。普段もそれくらい素直ならいいのに」
「俺はいつだって素直だよ」
「嘘だ、ひねくれものめ」
「うるさいゴリラ女」
「ゴリラ女に負けてたくせに」
「人間がゴリラに勝ってたまるか」
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