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そう言うと、マミーはさっさと部屋から出て行ってしまったのだ。私と玲は顔を見合わせる。断るのは無理そうだ。
そこでずっと黙っていた楓さんが口を開いた。にっこりと笑って私に言う。
「舞香さんなら大丈夫ですよお! こんなに素敵な女性なんですもの、伊集院さまも気に入ります」
「は、はあ」
「あ、伊集院さまのお誕生日ですからね? ちゃーんと相手が気に入るような手土産をお持ちくださいね? 伊集院さまは甘いものに目がないのですが、その分とても味にこだわりをお持ちです。伊集院さまに気に入られるような甘味を、舞香さんが探し出せるといいんですけどね……」
ふふっと笑ってこちらを見てくる。そして、彼女も立ち上がり、玲に甘い声を出した。
「玲さん。お顔を見れてよかったです。ここ最近お会いできてなかったから、私寂しくて……玲さんが気が向いた時でも、声を掛けてくれれば、私はいつでもお付き合いしますからね、いつでも待っています」
妻の前でなんてことを言うんだこの女は。呆れて物も言えない。
そして、やっと楓さんが部屋から出た。ぱたんと扉が閉じられた途端、私と玲のため息がシンクロした。玲は嘆く。
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