5807人が本棚に入れています
本棚に追加
「ご無沙汰しております! その節は本当に、ありがとうございました」
深々と頭を下げてくれるので、慌てて止める。
「こちらこそ、素敵な贈り物ありがとうございました! 娘さんはその後どうですか」
「おかげさまで、元気すぎて困るくらい元気です」
「それはよかったです!」
顔を見合わせて笑い、私たちは椅子に座り込んだ。
彼女は吉岡倫子さん。あの創立記念パーティーで、私が救命処置を施した娘さんのお母さんだ。あの後、丁寧なお礼の手紙と、素敵なストールを贈ってくれた人。手紙には電話番号も書かれていたので、思い切ってお茶しませんか、と誘ってみたのだ。
相手は二つ返事でオッケーしてくれた。そして今日、約束通りホテルのカフェで落ち合ったのである。
前会ったのは着飾ったパーティー会場だったし、バタバタしていたのであまり顔を見ていなかったせいか、今日会うのは緊張していたのだが、会った途端安心した。非常に優しそうな人だったからだ。
最初のコメントを投稿しよう!