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「基本的なことが分かってるなら十分でしょ……私なんてタンポポとバラとチューリップぐらいしか知らないよ」
「桜も知ってるだろ」
「細かいなあ。とにかく花に関する知識が乏しいって言いたかっただけ」
私はじっと写真を眺める。色々な人を撮っているらしく、見たことない金持ちが大勢映っている。数年分はあるようで、写真の枚数は結構多い。色褪せて年季を感じるものもあった。
「ていうか、確かに昔の写真にはケーキとか映ってるなあ」
私はぽつんと呟いた。玲もそれをじっと見つめる。
色褪せた写真たちの中には、伊集院さんがケーキの乗ったお皿を持っているシーンもあった。顔立ちを見るに、最新の写真より若々しいので、数年は前だろう。もしかすると十年くらい経っているかもしれない。
やはり、昔は好きだったのに今は一切取らなくなったということか。来賓者にも出さなくなったのなら、見るのも嫌ということ? ケーキに親でも殺されたんか。
「ん? これって」
一枚の写真が目に留まる。伊集院さんが持ってるこれ、小さくてよく見えないけど……もしかして?
「あと一か月、畑山さんに生け花について学ぶしかねえな」
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