新たな問題

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「ねえ、玲、私ちょっと思うことがあるんだけど」  私は思い切って、彼に相談することにした。頭の中に浮かび上がった仮説と、これからの自分の動きについて。玲は少し驚いたように、私の方を見ていた。  空は晴れ渡り、雲一つない快晴だった。気持ちのよい青空の下で、私は空を仰いで大きく深呼吸した。美味しい酸素が体中にいきわたる感覚になる。ベランダの扉を閉め、中に入ってみると、不安げな顔をした玲が私を見ていた。玲のこんな顔を見たのは初めてのことで、私はつい笑ってしまった。  近くに置いてある鞄を手に取りながら言う。 「玲もそんな不安そうな顔するんだ」 「当然だろ。俺は行けない、現場の様子を見られない。心臓が痛くて敵わない」  顔を歪めてそう言う。今日という日が近づくにすれ、玲は分かりやすくそわそわしていた。この日のために準備は滞りなく行ったし、万全の状態と言える。  だがもちろん、不安がないと言えば嘘になる。思い切った選択をしたのは私だし、玲もよくそれを許してくれたなと思う。それに何より、マミーと楓さんの存在は怖すぎる。
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