最悪の一日

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 私はつくづく、両親に恵まれなかった人生だったと思う。  母は私が九歳の頃、突然家からいなくなった。父曰く他に好きな男が出来たらしく、いつも恋に突っ走るタイプだった母は、私たちを置いて駆け落ちしたらしい。  父は一応、子供を見捨てることはしなかった。暴力だとかそういうこともなかった。ただ、無関心だった。それにギャンブルが好きな人で、仕事から帰るとお金を握りしめてパチンコに入り浸るような人だった。ギャンブルに勝つと大盤振る舞いで焼き肉を食べに行ったけど、負けるとその日の食事はなかった。  私は自分で言うのもなんだが、幼い頃からしっかり者だったので、父がパチンコに勝った日にはお金をこっそり別に分けておいた。へそくりのようなものである。だから本当に困ったときはそこからお金を出してしのいでいた。子供心に、父だけに金の管理をさせてはいけないと気づいていたのだ。さらに、気も強いし根性もあると自負している。子供の頃から生意気な近所の男子と喧嘩していたタイプだ。
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