最悪の一日

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 両親はくずたちだったが、私には大事な弟がいた。七歳下の可愛い勇太という弟だ。賢くてしっかりしてて、私に懐いていて本当に可愛かった。すべては弟のために頑張ろう、と子供心に思うほど。  父親に期待はできない、私がしっかりせねばと考えた自分は、手に職をつけるために看護の専門学校に進んだ。大学より大分授業料は安かったが、それでもあの父は頼りにならないので厳しかった。相変わらずパチンコで勝つと気前よくお金をくれたが、そうでない日は百円もくれなかった。  高校の頃からバイトしまくって貯めたお金、そして専門学校進学後も必死にバイトを掛け持ちし、私はようやく看護師として就職できたのだ。このころ、弟の勇太は十五歳。彼も新聞配達だの節約料理だので十分家計に貢献してくれた。  私が就職したと同時に、父は蒸発した。仕事も辞め、いつの間にか消えていたのだ。私たちは驚きもしなかったし探しもしなかった。私が一人前になったから、もう親の務めは終わりだとでも思ったんだろう。(そもそも親の務めを果たしていなかったのだが)
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