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「別れたい?」
目の前のコーヒーに手を付ける余裕もなく、私は唖然として聞き返した。
静かな喫茶店、運ばれたばかりの香りのたつコーヒー。私は決して重要な話をするなんてことはなく、ただこの穏やかなお店で一息つくだけなのだと思っていた。付き合って半年になる彼、大島和人は、動けない私とは裏腹に、涼しい顔でコーヒーを飲んでいる。
友達の紹介で付き合いだした、三つ年上の人。結構大きな会社に勤めているとかで、いつも自信に満ち溢れているタイプの男性だった。私はそこが気に入っていたのもある、自分が過酷な人生を送ってきたので、ちゃんと自立して頑張っている男性の方が好きだったのだ。
それなりにうまく行っていると思っていた。お互い依存せず、程よい距離感。熟年夫婦かよ、と友達に突っ込まれたこともあるが、私はそれが居心地がよかった。
だから突然こんなことを言われて、戸惑うなという方が無理なのだ。
和人は表情を一切変えずに言った。
「悪いけど、そういうことで」
「理由ぐらい教えて」
「他に好きな子が出来た」
「……うそ」
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